褥瘡(じょくそう)とは

一般的に『床ずれ』と言われています。寝たきりなどや長時間にわたり同じ姿勢などで、身体の一部が圧迫され続けて血流が悪くなり、栄養がいきわたらず皮膚が赤みをおびたり、ただれたり、傷が出来たりする状態のことをいいます。また、そこから細菌が入ると、感染症を合併し死に至ることもあります。

特に寝たきりの方に多くみられる事がありますが、認知症や麻痺(まひ)のなどで自分で寝返り動作やが出来ない方などにも起こりがちです。

褥瘡の重症度

ステージ Ⅰ皮膚に圧迫しても消えない発赤(ほっせき)や皮内出血などがみられる
ステージ Ⅱステージ Ⅰ の床ずれに摩擦力が働き、皮膚が剥離して真皮層が露出したり、水疱などができたりしている
ステージ Ⅲ組織欠陥が皮下組織に及んでいる
ステージ Ⅳ組織欠陥が筋膜を超えて筋肉や骨、腱などにまで至り、感染を伴いやすい

NPUAP (米国褥瘡詰問委員会)が提唱するステージ分類

褥瘡の発生部位

持続的に圧力のかかりやすい骨の出っ張った部位にできやすくなります。仰向けで寝ているときに最も発生しやすいのは、体圧のかかる仙骨部おしりの中央の骨が出た部分です。また、横向きに寝ているときは、大転子部太ももの付け根の外側などに発生しやすくなります。

褥瘡が発生する4つの大きな原因

1. 圧迫

自分で寝返り出来ない方や、関節に拘縮や麻痺があったり、痩せて骨が出ていたりする方は、その部位の圧迫が強くなる可能性が高く、褥瘡ができやすくなります。

2. 摩擦

シーツや服のシワがあるとその部位にも圧が掛かり続け、そのため長時間同じ姿勢でいると血流が悪くなり、これも褥瘡ができやすくなります。またベッドから車いす、車いすからベッドなどへ移乗する際に体を引きずったり、車いすに座っているときにずり落ちてしまうとおしりや背中に摩擦が生じて褥瘡ができやくなります。

3. 不潔や蒸れ

オムツや紙パンツを使用している方は尿、便などで皮膚が蒸れて不衛生になる為『かぶれ』や『ただれ』が原因となり、褥瘡ができやすくなります。また体温調節がうまくできず、多量の汗をかく方も同じく注意が必要です。

4. 栄養不足

栄養不足になると抵抗力や治癒力が低下することで、全身状態の悪化に繋がります。これにより免疫力が下がり褥瘡ができやすくなります。

褥瘡の予防について

予防可能な疾患ですが、体調が悪化したり食事がとれなくなったりすると、十分に気を配っていてもできてしまうことがあります。一度発生してしまうと治りにくく、さらに悪化してしまいます。そのためなるべく褥瘡が発生しないよう、発生原因を除去する事や日ごろの着替えや入浴の際などに、皮膚観察をしっかりと行い、皮膚の赤みや変化を見逃さない事が重要です。

1. 体位変換・ポジショニング

発生しやすい部位を意識しながら、身体の同じ部分に長時間の圧迫がかからないように、定期的に身体の向きや姿勢を変えます。皮膚の赤みがみられたら、その部分が圧迫されないような体位をとります。

2. 褥瘡予防用具の使用

エアマットレスやクッションなど、体圧分散用具を活用することで予防できます。

3. 皮膚摩擦やズレを防ぐ

衣服は、肌触りがよく、通気性や吸湿性に優れた素材のものを選び、身体を移動するときは、皮膚の摩擦を防ぐため、引きずらないように持ち上げるなどの注意をします。また、シーツや寝衣などのしわや縫い目が皮膚に直接あたらないようにします。

4. 身体の清潔保持

尿や便などの排泄物や汗が皮膚に付着した状態が続くと、皮膚への刺激が加わってしまうため、丁寧に拭き取り、常に清潔にし、排泄用品は通気性のよいものを選び、ぬれたまま長時間あてることのないようにこまめに交換をします。また、血行を良くする入浴は予防にも効果的です。入浴が難しい場合は、清拭や部分浴を行います。

5. 栄養を十分にとる

バランスのよい食事と適度な水分補給を心かけて、食の細い方は意識して栄養価の高い食品をとり、栄養状態を観察します。また、その方にあった食事形態や口腔ケアも低栄養の予防や改善につながります。

褥瘡の処置について

先ずは一番大切な傷口の洗浄と発生部位の状態にあう軟膏や外用剤を用いて処置を行いますが、身体の状態や、褥瘡が発生した原因、傷口の深さなどによっては、簡単に治らないこともあります。そこで褥瘡が発生した原因をきちんと取り除き、悪化や再発防止の為に栄養状態など多岐にわたり考察しながら完治に向けて治療を進めていくことが重要かつ大切です。